身近な魔法使い

ーーーーーーー
チヒロ(かもめと街) 2023.12.31
読者限定

「この文庫本、どの棚にありますか?」

そう聞くと、眼鏡をかけた小柄な女性の店員さんが時代小説の棚まで優しく案内してくれた。たったそれだけの出来事なのに、その本屋へ行くたびに、「あの店員さんにまた会えないかな?」と密かに願っている。

なんとなく行くたびに思い出すからか、レジで偶然会うと、なんだかとても癒やされるのだ。こちらは特に常連ぶるようなこともせず、普通の客でいるだけだが、心の中で「今日来てよかったな」と思っている。

きっと日々業務に追われているだろうに、彼女の周りには穏やかな気配が漂っているのはなぜか。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2068文字あります。

すでに登録された方はこちら