大阪、強欲の旅 part.3

(大阪の旅編、第3弾ですがここから読んでも大丈夫です)
チヒロ(かもめと街) 2024.12.28
読者限定

昨晩は文フリの後、友人と5時間も話していた。


ホテルへ戻り、深夜に翌日の予定を立てると、ひたすら大阪市内を西へ南へ北へと移動するルートになった。まるで分刻みの売れっ子有名人のような時間管理をしないと周れないことに気づき、あたふたと地図とにらめっこする。空間把握能力がよわい。

翌朝、ぼやぼやしたままチェックアウトして街へ出た。

なぜこんなに暑いのだろう。朝から朦朧としながらトランクを引きずって歩く。

まずは近くにある喫茶店へ寄ろうと、Googleマップを片手に向かうが、気づけば通り過ぎている。営業中とネットでは書かれていたけれど、どうやら休みのよう。


仕方なく次の目的地へ向かう。片手にトランクとトートバッグ、首からは一眼レフ、手にはスマホ。背中には灼熱の太陽を浴び、すでに体力が危うい。そんなときでも、大阪の街はわたしの目線を簡単に奪ってゆく。味わい深い渋いタイルがあれば撮り、レトロなビルを見つけたら通行人の邪魔にならぬように避けつつ撮る。

駅に着く頃にはヘトヘトで、今すぐトランクを放り投げたくなり、コンビニへ駆け込む。大阪はコンビニの店員さんも温かい。目を合わせて話をするだけで、血の通っている者同士だと思えるのはなぜなのだろう。

地下鉄へ潜り込んだところで、今日が月曜日だと気づく。駅に着くとスーツのサラリーマンが足早にエスカレーターを駆け上がる。

関東と関西の違いでよく言われる、エスカレーターの立ち位置の違い。おろおろしている間に気づけばエスカレーターの階段を昇らざるを得なくなった。

次のエスカレーターでも昇ろうとしたところ、「止まっても そない時間は 変わりまへん」と書かれたポスターが目に入った。わたしが密かにコレクションしている駅員ポスターだ。(※おそらく駅員さんが作っているであろう、お手製感溢れる最高なやつをそう呼んでいる)

その言葉に納得し、次のエスカレーターは運ばれるがままに昇る。駅に着いて案内板を探そうと上を見れば、天井の近くに貼られた手製のPOPが見えた。「セブンイレブンハートイン」、聞いたことないフレーズ。そこに映る店員さんの表情の豊かさやポーズまで撮った写真がまぶしい。 

ようやく来られた「喫茶 マヅラ」で朝ごはん。地下街の駅ビルにあり、かなりの広さだ。ディナーショーでも出来そうなキャバレーっぽいゴージャス感と、70年代っぽいスペイシーな雰囲気もある。壁や天井がガラス張りなこともあって、より広く感じられる視覚的効果もある。朝よりも夜が似合う場所かもしれない。卵のように丸い黄色のソファがかわいい。

メニューの金額を見て驚いた。コーヒー300円、ホットドックセットは600円。(記憶違いでなければ……)

常連のお客さんがスタッフと挨拶を交わし、新聞を広げる。わたしと同じように静かにはしゃぐカップルが遠くに座っている。流れるジャズをShazamで検索すると、アニタ・オデイの「I didn’t know what time it was」という曲だった。「時さえ忘れて」という和訳を見て、ああまずいそろそろ出なくてはと腰を上げる。

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