大阪、強欲の旅 part.2
バスが揺れるたび、座りながら押さえつけている白いトランクが滑って転がっていかぬよう、握った手に力を込めた。
ローラーについた滑り止め防止のペダルを踏むのすら面倒だった。手指の動きはかなりよくなったとはいえ、関節に持病があるのに酷使して大丈夫なのだろうか。明日が本番だというのに。
目的地から書店まで、ガラガラとトランクを押しながら向かう。この辺りはオフィス街なのか、土曜の夕方は静まり返っている。
ちいさな橋を渡ると、2年前の記憶が鮮明に浮かんできた。ちょうど橋がかかっているのがビルの2階部分になっていて、1階のエントランス横の空き地からにょきにょきっと細長いサボテンが3本生えていた。前に見つけたときよりもさらに伸び、茎の先端には支柱が追加され、ビルの配管に沿わせて上に伸びてゆくのを支えられている。ひょろりとしたサボテンは伸びすぎた背丈を支えるには頼りなく見えるものの、倒れぬよう支えられていて、育てている人の路上園芸への愛が滲み出ていた。
FOLK old book store に着いた。1階がカフェで、本屋は地下とのこと。トランクを預かってもらい、重たい扉を開けて階段を降りる。事前に予習をしてこなかったため、どんなお店なのか検討もつかなかったけれど、想像していた以上にググっと本がひしめいていて、かつ見やすくジャンル分けがされていた。ちいさなギャラリーではゴブスタインの絵本の展示も。
マンガやグッズも多く、本に興味がなくても手に取りたくなるような雑貨が本の隣に並んでいて、どこか昔のヴィレッジヴァンガードっぽさを感じた。大阪にいたらここに通うだろう。『ものとかたり』というカタログのようなZINEを買った。本がひしめき合う中、静かに訴えかけるような装丁に呼ばれた気がしたのだ。